でらてーげー(^_^)/

沖縄病名古屋人の趣味的日常

トリウム原子炉の憂鬱

福島原発の事故以来、トリウム溶融塩原子炉に注目が集まっているようだ。
大部分は現在のウラン原子炉の代替としてトリウム原子炉が有望であるとするものだ。
陰謀論的にトリウム原子炉が潰されているというような記事もある。
でもまあ、ざっと斜め読みした限りではトリウム原子炉もたくさんの問題を抱えているように見えるし、今までの原子炉に比べると違和感もある。
最大の違和感は、700℃程度の高温の放射性物質を含んだ液体燃料が炉と熱交換器の間を循環するというものだ。
軽水炉の場合は循環するものは水である。放射性物質に汚染こそされているが、近代の黎明期の蒸気機関からずっと使われているボイラーと本質的には変わらないはずだ。つまり、枯れた技術である。
だが、トリウム炉の場合、冷却用の水の代わりに高温の溶融塩が流れる。しかも、燃料を含むのだ。
そんな得体の知れないものが流れる熱交換器などというものが、まだまだ技術的知見の蓄積が少ないものが、安全に維持管理できるものだろうか?
特に注目したいのは、炉と熱交換木の間をつなぐ配管系の存在だ。
配管を適切に管理するのはとても厄介だ。
実は配管は、消耗品である。高温高圧の作動流体の摩擦によって減肉するので定期的に交換する必要がある。メンテナンスフリーという訳にはいかない。あのもんじゅが出した死亡事故も、配管のトラブルであることを忘れてはいけない。浜岡の原発が停止したトラブルも配管系。
それぞれ設計ミスであったり保守作業のミスであるが、職人による溶接部位の塊であるこの配管系というやつは人間系によるミスからは到底自由にならない。
ともあれ、軽水炉であれば漏れるのは放射能を含んだ水。
もんじゅならば可燃性のナトリウム。軽水炉よりは危険。
そして、トリウム原子炉では燃料自身だ。
この燃料にはプルトニウムも混入してあることも忘れてはいけない。
トリウム原子炉が実用化されたら、燃料漏れによって放射性物質がもれたというニュースをよく聞くようになるのか?
それでは本末転倒ではないか。
いくら、原理としてはより安定でも、運用としてはより無茶が過ぎるようにしか見えない。

第2の違和感は、「トリウム原子炉の構造は軽水炉の構造よりも単純」というよく書かれている一文だ。
大抵、イラストも添えてあって一見、説得力があるように見える。
でも、よく考えてみると、軽水炉の絵は運用段階にある実際の原子炉の構造を単純化したものだ。
一方、実験/検証段階でしかないトリウム原子炉の構造は模式的/原始的。
情報の粒度が違うものを並べても意味がない。
昔のクラシックカーと現代の自動車は、同じガソリン車であるにもかかわらず、構造はとんでもなく複雑化した。それは性能を向上させるための補機類や制御装置が付加されているためだ。
今後、開発されるであろうトリウム原子炉の実用炉が軽水炉よりも複雑になる可能性はないとは言えまい?

第3の違和感は、火付けにプルトニウムが必要ということだ。
軽水炉で出たごみ(プルトニウム)をトリウム原子炉で燃やしてごみを減らすのはいい。
でもそれが、トリウム原子炉は軽水炉がないと運用できないということであれば問題だ。
それではトリウム原子炉は現在のウランを主体とした核燃料サイクルを多少なりとも閉じるのに役立つだけ。それはつまり、もんじゅの代役だ。

そうであるならば、トリウム原子炉は、いわば救援投手でしかないと思う。
今後100年、200年と続くであろう脱原発の過程で過去の技術になるべきだ。

(2011/11/11 あまりにもこの記事の訪問者が多いので加筆訂正してみました。多少は読みやすくなったかなぁ。文才に欠けるのでまったく分からない)


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この記事へのコメント
問題はまだまだいっぱいあるよ。
でもいづれ(既に)人類はエネルギー問題に直面するんだ。
中国は賢い。最近のメディアが手放し礼賛しているような表現で安全を売り物にして各国に売りまくる時が来るだろうね。核不拡散を理由にするアメリカの横槍も名分が立ちにくい。トリガのプルトニウムも、燃料も原発も丸抱えでまずは格安で売りまくる。世界はもう、中国様の思い通りよ。
Posted by kiminoutenki? at 2011年08月07日 01:35
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